メールマガジン

「今だから話せる佐藤のコラム 第4号」(初めての海外生活4)

┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃◆┃(公社)いわき産学官ネットワーク協会News  2017.07.09   
┣━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃  「上海レポート」でお馴染みの佐藤忠幸氏より
┃ 『今だから話せる佐藤のコラム』が届きましたのでお知らせいたします。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 中国での会社設立・販路拡大等を支援している、
(公社)いわき産学官ネットワーク協会アドバイザーの佐藤忠幸氏から
「今だから話せる佐藤のコラム 第4号」(初めての海外生活4)をお届けいたします。

==========================================================================

◇「今だから話せる佐藤のコラム 第4号」(初めての海外生活4)◇

マレーシアの言語と宗教
                       佐藤忠幸
さつきも散り、今はアジサイの季節となりました。
白い花が、色づいて青色や紫色が咲き出し華やかさが増してきました。
梅雨に入ったとは言え真夏日の晴天が続いていましたが、やっと昨日本格的な雨が降り梅雨を実感できるようになりました。
天気予報では「どこそこは〇日から梅雨に入りました」と宣言していますが、宣言と実際の天気があまり合っていません。
よく聞けば「梅雨」の定義は明確でなく周りの要望に応えて適当に発表するだけだそうです。

私は昨年4月までの約26年間を、外国で単身赴任生活をしてきました。
今号も99年7月まで駐在したマレーシア時代の話題を報告いたします。
前前号にてマレーシアは、多民族国家であり多言語国家だと報告しましたが、実はもっと複雑です。

また、現在マレーシアなどイスラム教の国ではラマダンという断食をする神聖な時期ですね。
わざとこれを狙った不届きなテロリストが出るとはとんでもない世の中となったものです。
いずれにしてもこの時期はモスクに近づかない方がよさそうです。

【マレーシアの複雑な歴史と言語】
 マレーシアの言語は、公用語はマレー語であり、私用言語は民族ごとに異なり、共通ビジネス用語は英語です。
マレーシアは、日本と違って近世の大部分が植民地の歴史です。
日本が占領する前は、イギリスやポルトガルなどの欧州の支配下に長くありました。
彼らが開拓のためインドや中国から連れてきた奴隷や出稼ぎ人が定着したり、それ以前の国境の概念が無い時代にボルネオやスマトラなどのインドネシア人と多くの人が交流したりして混じり合うなどで複雑です。
民族というと、マレー系、中国系、インド系、其の他系というのが一般的ですが、実はその〇〇系の内に多数の民族がいることを皆さん見落としています。
日本も地方ごとに方言があり、〇〇弁という言語がありますが、他地方の人が聞いたら通じないとか、読めないとかという言語は少ないでしょう。
しかし、マレーシアでは民族内であっても系統が違うと全く通じない言語があり、それは先祖の出身地と宗教に密接につながっています。

【マレーシアは多宗教国家】
 マレーシアは国としての宗教すなわち国教はイスラム教です。
ただし、国教としての影響を受けるのはマレー系だけです。
彼らはイスラム教以外の信仰を禁じられており、彼ら彼女と結婚するにはイスラム教に改宗しなければなりません。
しかし、マレー系でも少数民族の一部に独特の神教が今も続いています。
イスラム教の教義は比較的緩やかで、スカーフ等で顔を隠す者は皆無に近く、髪すら隠さない女性やカラオケで酒を飲む女性ホステスもいました。

中国系マレー人の宗教は、中国本土と同じく仏教やキリスト教が主で、道教やイスラム教と多種多様です。
インド系マレー人の宗教は、ヒンドゥー教が圧倒的に多く、一部にシーク教などもいます。
したがって、クアラルンプール(KL)など大都市であればあらゆる宗教の教会や寺院が建っていたのが印象的でした。
  
【多様なるマレーシアの行事】
 国の行事や祝祭日は各民族平等にありました。
イスラム教徒であるマレー系マレー人の最大の行事はラマダン(断食の月=後述)明けのお祭り、キリスト教としての休日は当然クリスマスで、そして宗教や民族に関係なく旧正月(チャイニーズ.ニューイヤー)は休日で、それぞれ一週間ほど全社員が休みでした。
ヒンドゥー教関係のお休みも有りましたが少人数でしたので該当者のみを数日間休みにしていました。
おかげで我々日本人向けのお休みは元日のみでした。
ラマダン休日はイスラム教徒が多いアジア全体が混むので、殆ど帰国していました。
観光旅行は旧正月休みに東南アジア諸国やエジプトへの観光旅行を楽しんだものです。
まだ90年代は中国人観光客が少なかったことと、旧正月休日がほぼ1月か2月で南方としては比較的涼しいためです。

 ちなみに、中国歴(農歴、旧暦)およびイスラム暦は太陰暦で、1年が354日か355日(時々閏年で1日多いため)です。
ただし、中国歴や日本の旧暦は厳密にいうと太陽太陰暦といい、およそ3年に一回閏月をもうけ13カ月にして太陽暦との差異を調整しています。
それに対してイスラム歴は閏月が無いため毎年11日短く、33年暮らしても実質的には32年だということです。そして毎年11日程度行事が早まります。
ラマダン時期も毎年違うのはそのためです。
今年のラマダンは5月27日から6月25日で、25日からほぼ1週間はラマダン明け休日でお祭りです。
来年のラマダンは?ここから11日差し引いてください。
なお、断食といっても太陽が出ている間だけが飲食禁止です。
でも昼間の約12時間飲食禁止は辛いですよ。だから妊婦や子供、病人は免除されます。

【土地の子のマレー系民族】
 土地の子(人)と言われるマレー系民族はマレー語を使い、総人口の60%を占めますがその内も大きく分けるとお隣のインドネシアから移住した人と、元々マレー半島に住んでいた先住民との2種類が存在し、それぞれ言語が異なります。
インドネシアから移住した人が公権力を握った関係で、国全体の公用語となっているマレー語も実はほとんどインドネシア語と同じで外来語です。
(だから、日系企業の駐在員もマレーシアとインドネシアとの転勤は多い。)
マレー系と言いながら、先住民が日常使う言語は自分の民族内でしか通じない民族語です。

 マレー系マレー人は、長い間比較的低い地位にあり、しかもビジネスセンスも低いことから経済的な地位も学歴も低く「ブミブトラ政策(土地の子政策)」という政策をマハティール氏が首相時代に実施しマレー系を保護していました。
具体的には、国立大学や公務員は民族比率で入学・採用人数やポストを割り振り、民間企業にもそれを強制したものです。
各社も全社員の採用比率人数までは守っていましたが、さすがに管理職など地位別の比率を守ることは難しく、民族ごとにゼロでないように気を付けるだけで済みました。
したがって、我が社の課長にはマレー系とインド系を1名ずつ採用し、残りは全て中国系でした。
何故中国系が多いのか?それは高学歴の多くが中国系ということもありましたが、優秀な人が多かったからです。
逆に製造作業者はほとんどがマレー系でした。その方が採用し易く、給料も安かったからです。

【中国語を読めない中国系マレー人】
 2番目に多い中国系民族も複雑です。
それは先祖の出身地方によって言語が違うからです。
マレーシアへ移住した中国人の多くは、貿易好きでしかも北京政府から疎んじられていた中国南東部の広東、福建、潮州、客家(ハッカ)などから来た人が多く、その地方の言葉を使う人が大部分です。
そして学校で習った言語ではないので標準語(マンダリン≒北京語)を使えない人が大部分です。
マンダリンを話せるし読み書きも出来るのは、中華系学校へ通った極めて少数の者だけです。
したがって、中国系と言っても出身地が異なると中国語では会話できず、マレー語や英語で会話しています。
地方に行くと英語も出来ない者が多く我々外国人には困りましたね。

 私の片腕のJ取締役も広東語は話せますがマンダリンは出来ず読み書きも出来ませんでした。
ある時、私が中国系マレー人向けの中国語新聞を拾い読みしていたらJ氏が「佐藤さんは、中国語を話せないのにどうして読めるのか」と驚いていました。中国本土の文字は簡略したため見ても分かり難いし、意味も日本と違いますが、中国以外の中国文字は、古い日本語とほぼ同じですから見ても意味だけはある程度理解できました。

【経済を握った中国系】
 前記の如く、ブミブトラ政策実施前の大学入学者はほとんどが中国系マレー人でした。
それを人口比率に変ってから中国系の人にとってはマレーシアの大学は極めて狭き門と変わってしまいました。
したがって、外国留学する者が大幅に増え、グローバル的な考えをする者がますます増え、元々商売上手な中国系ですから経済界は確実に彼らのものとなったのです。
私が駐在していた90年代は30%弱の中国系マレー人が95%もの経済を握っていたほどで、政治と労働はマレー系、経済は中国系と言われたものです。

 彼らの留学先は、旧宗主国のイギリスが第一番目で続いてアメリカ、カナダ、が並び次はオーストラリアでした。
お隣のシンガポールはあまり選びませんでした。
授業料も物価も高いのとマレーシアと国が分離したいきさつに理由があるようです。
日本は、長く「ルックイースト政策」で尊敬されていましたが、残念ながら留学希望先としては遥か下位でした。

【地味だが親しみ易いインド系】
 3番目に多いインド系は中国系と異なり貧しくて出稼ぎに来た或いはイギリス人によって連れてこられた人が多いようです。
昔はインドもマレーシアと同じくイギリスの植民地だったからでしょうね。
そのせいか、彼らの英語は極めて訛りが少なく分かり易い発音でした。
我が社のインド系社員は、生産技術員、清掃員2名、警備員3名の合計6人だけでしたが、地味ながら皆よく勤めてくれたと記憶しています。
その中で生産技術員が極めて優秀であるため、入社間もないものの課長に抜擢しました。
見る見るうちに実績を上げたため、「よくぞ思い切って抜擢した」と社員及び親会社からも称賛を浴びたものです。
しかし、インド系社員で、最も重用したのは清掃員の内の一人です。
我が社はマレー系の小さな会社を買い取り日系電子部品メーカーに変えたのですが、彼女はその前の会社から勤めていたベテランです。
いつも地味な色の長いサリーを着て不便そうだが丁寧に隅々まで清掃してくれていました。
彼らとの会話は、もちろん英語でしたが、今思い出しても外国語で話したという記憶が無いほど親近感を持てる関係でした。

【ユニークな履歴書】
 社員を採用するには履歴書を出させますが、日本の履歴書と大幅に異なるのは、次の欄があることです。
・民族(マレー系か中国系かという区分で採用比率を考えるため重要)
・宗教(特にイスラム教徒の場合お参り時間を設ける必要があるため)
・語学力(話す力と読み書きの力と区分して書き出す)
普通の社員はマレー語と英語そしてもう1ヵ国ぐらいの話す力がある程度ですが、中国系の場合は話す力が5ヶ国以上という者が多くて驚きました。
何処とどこの国の言葉を話せるのかよく見ると、マレー語、英語、そして広東語、北京語、福建語、まれに日本語やフランス語などです。
広東語、北京語、福建語を中国語だと一括りにしないところが面白いなと思ったものです。
確かにそれらの言葉は全く違います。
例えば、中国人がよく使う「没問題」(メイウェンティ=問題ない)は、広東語では無問題(モウマンタイ)です。
文字は似ていますが発音は全く違います。


余談ですが、中国人が連発する「問題ない」は「問題あり」と心得るべきでしょう。
・本当に問題がないのか?
・本人が問題に気づいていないのか?
・問題を見つけ出そうとしていないのでは?
彼らが言う「没問題」をストレートに受け入れるのは危ない、というのが中国ビジネスの基本ですよ。
とは言いながら、現代日本も同じかもしれませんね。

 長文で申し訳ありません。この続きは次号で。
 質問やご意見はご遠慮なく下記へどうぞ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佐藤忠幸/Sato Tadayuki 
TEL&FAX 045-771-1745 
E-Mail: tada-sato@mvb.biglobe.ne.jp
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃発行元:公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会(ICSN)事務局  
┃住  所:〒970-8026 福島県いわき市平字田町120番地
┃     LATOV6階 いわき産業創造館内
┃TEL    : 0246-21-7570      FAX    : 0246-21-7571
┃E-mail : iwaki-sangakukan@bz01.plala.or.jp 
┃URL   : http://www.iwaki-sangakukan.com
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃※配信の登録、及び解除については、こちらからどうぞ↓
┃ http://www.iwaki-sangakukan.com/m_magazine/
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会
〒970-8026 いわき市平字田町 120番地 LATOV6F いわき産業創造館内
TEL:0246-21-7570  FAX:0246-21-7571 E-mail:iwaki-sangakukan@bz01.plala.or.jp
Copyright (C) ICSN All rights reserved.