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「今だから話せる佐藤のコラム 第3号」(初めての海外生活3)

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┃◆┃(公社)いわき産学官ネットワーク協会News  2017.05.21   
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┃  「上海レポート」でお馴染みの佐藤忠幸氏より
┃ 『今だから話せる佐藤のコラム』が届きましたのでお知らせいたします。

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 中国での会社設立・販路拡大等を支援している、
(公社)いわき産学官ネットワーク協会アドバイザーの佐藤忠幸氏から
「今だから話せる佐藤のコラム 第3号」(初めての海外生活3)をお届けいたします。

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◇「今だから話せる佐藤のコラム 第3号」(初めての海外生活3)◇

      マレーシア時代の現地人役員
                             佐藤忠幸

落葉樹も新芽が生い茂り、ご近所の「紅花トチノ木」も真っ赤な花を付け
すっかり初夏の陽気となりました。
初春ごろ下手だったウグイスの鳴き声もすっかり上手になり、盛んに
彼女を呼んでいます。メジロもそろそろ出てくるかなと期待しています。
暦の上では「立夏」も過ぎたのですから当然でしょうね。

私は昨年4月までの約26年間を、外国で単身赴任生活をしてきました。
今号も1990年から9年間駐在したマレーシア時代の話題を報告いたします。

【通訳の最後は英語から英語の通訳】
 英語が苦手の私は、代々色々な通訳を使って現地人とコミュニケーション
をとっていました。
その最後の通訳は中国系マレー人のJ取締役です。
彼を通訳として使ったのは、私の拙い英語を本格的な英語に直すという、
英語から英語の通訳です。
J氏とは教えたり教わったりしながら、共に現地法人の経営をした仲です。
そうなったのは、私の語っている貧しい英語から、私が何を考えて、何を言い
たいのか言おうとしているのかを感じ取る感受性と鋭い洞察力の賜物です。
赴任当初は色々な通訳を通して話していたのですが、J氏が通訳を通した
会話に様ざまな問題を感じて、私と直接の会話を求めてきた結果です。
直接会話をすると言っても、当初は私の英語力では全く通じません。

しかし、お互いに理解しようと努力している内に、J氏は私が話せる単語、
理解できる言語範囲が分かってきました。
そうなると会話の理解は簡単です。
彼は、私の理解できる単語で話してくれ、私の話した言葉を
「こういうことですか?」
と正しく言い換えて確認をしてくれるようになりました。
結果として、私が朝礼で話す時や会議などでの発言は、私がいい加減な英語で
話し、それをJ氏が正しくしかも社長らしい英語に直して発表してもらえるように
なったという訳です。
そして、通訳としてはそれが最もよい安定した姿でした。

【通訳余談】
 オーストラリアのお客様がマレーシア現地法人に見えた時の話です。
そのお客は盛んに「ウオット」という言葉を使います。
何か分からないので同席していたJ氏に聞きました。
「ホワット イズ ウオット?」と。
J氏は戸惑いながら「ウオット イズ ホワット」とのお答え。
即ち「ウオット」は「What」と書き「ホワット」と同じでした。
私が中学で習った英語はアメリカ英語、オーストラリアやニュージーランド
はイギリス英語でそれによる発音違いだそうで、皆で大笑いでした。

またまた余談ですが、日本の親会社社長からの英文メッセージをJ氏に私で理解
できる英文に翻訳してもらったこともありました。
今は亡き日本の社長は、若いときにアメリカに留学したこともあり英語に堪能です。
ある日、マレーシア現地法人の創業記念日に英文メッセージのFAXがきました。
私と同じ日本人が書いた英文なのに私には全く理解できません。
J氏を呼んで「これは何が書いてあるのか?」と聞いたところ、
「これは立派な文章ですね。意味はこういうことです」と私が判る英語で教えてくれました。
「なぜ判り易く書かないのだ」と言ったところ、
「この文章は社長レベルの人が公式な場面で使う高尚な英語です。普通の人には
書けない英語で、すごいことですよ」と感心していました。
早速、読み方を教わり記念パーティで私が読み上げました。
なお、パーティには英語に不自由なマレー系マレーシア人も多く参加していますので、
マレー語の通訳も横に付いていました。
多分英語で分かる人でも私の話す高級英語(?)は通じないのでマレー語の
通訳を入れたのでしょう。

【名目だけの役員はあり得ない】
 J氏が取締役に就任したのは若干27歳でした。
彼を取締役に任命したのは親会社の社長です。
当時のマレーシアの法律では、外資系企業であっても、マレーシアに会社を作る
場合は、取締役は最低2名をマレーシア人とし、内1名は常勤とすることが義務
づけられていました。
日本の社長は、その法律対策として(仕方なく)J氏を
「名目だけだよ、名義を貸してね」と言って取締役に命じたのです。

私を含めて日本人の全てがそれを聞いていたし、日本人としては若僧ですの
で誰もがJ氏を役員扱いしませんでした。
私が現地に赴任して間もないとき、そのことで厳しい議論がありました。
彼曰く「マレーシアには名目だけの役職はあり得ない。ましてや取締役は論外だ」です。
確かに取締役だと発表され、組織図にも明記され、役所にも届入れがなされ、
既に責任が付いて回っています。
特に、外資系企業の場合ローカル役員はその責任が退職後も含めて永久について回ります。
何故なら、会社に何か問題が起こっても社長など外国人役員は、帰国してしまったら
国際指名手配されてまでその責任を追及されることはありません。
しかし、会社に問題が起こった当時のローカル役員は死ぬまで責任を追及され逃げられません。
日本企業と違って極めて責任の重い存在です。

そのような法律的な問題よりも、ローカルスタッフからは正式な役員として扱わ
れ、そう呼ばれているのですから、それを「名目だけだよ」としたら、格下げと見
なされクビにするのと同じことになってしまいます。
J氏を、名実ともに「取締役」に育てれば「名目」という肩書は自然に消えるだろう、
そうするのは私の役割だと気が付き厳しく育て始めたのが赴任2年目です。
結果《英語から英語の通訳》が可能となり、専門通訳は雇いませんでした。
直接的な繰り返し会話で相互に理解できるようになってきたわけです。

【任せるが放任しない】
 J氏は管理部門の責任者でもあります。したがって人事部門や財務部門は彼
の管轄でした。
私が当初もっとも重視したのは財務です。
それは赤字脱却と資金不足脱却が喫緊の課題だったからです。
私が赴任する前の月次決算書は直接日本の財務部門へ送られ、日本の社長と
財務部長がチェックしていましたが中身はよくわからなかったようです。
私が現地の社長として赴任してからは、J氏が私に「サインをお願いします」と
言って決算書を持ってくるようになりました。
その場でサインをしてもよかったのですが、
「サインを求めるのではなく、照査承認をお願いします、と言え」と注意し、
「照査するので1時間後に来るように」と言いました。
本当に照査するとは思っていなかったようで、彼は驚いていました。

実は当時の私は財務会計には全く素人でした。
しかし、日本では製造部門の責任者でしたので原価計算ぐらいは出来、
「先月は幾ら売った。そのために幾ら仕入れて、いくつ作ったから、幾ら
儲かり、幾ら在庫が増減したはずだ」
という頭上計算は出来ます。
またマレーシアの企業会計は国際会計基準に準じており、日本人にも
分かり易い会計処理方式です。
したがって、頭上計算と決算数字との違いを見つければ照査は簡単です。

その方式で疑問点をいくつか見つけJ氏に質したところ、それに彼は答え
られませんでした。
何故なら彼は(優秀だと信じる)財務課長から提出されたものをそのまま
鵜呑みにして私のところに承認を求めてきたからです。

私は「任せても放任するな」と厳重に注意し指導しました。
確かに財務課長は優秀です。
しかし、だからといって、
役員がロクに照査もしなくて承認し続けたら将来どうなるか、
それを社長が鵜呑みにしてメクラサインし続けたら会社の将来はどうなるか、
極めて危険なことであることを教えました。
私が質した内容は結果的に問題が無くそのまま承認をしましたが、以降J
氏もメクラサインはしなくなりました。
財務課長もJ氏や私がキチンと照査することが分かり会計精度は格段に
上がりました。しかも、自分たちの仕事に上司が強い関心を持ってくれる
ことに意気を感じ、ますます優秀な管理者へと成長しました。

J氏は充分その職責を果たし、唯一のローカル常勤役員としての存在感を
示すようになり、後には営業部門も彼に任せられるようにまでなりました。
事実99年に私が帰国した後は彼が社長を勤めてくれました。
まさに、《立場は人をつくる》の典型例です。
90年当時の会社の管理監督者の大部分がJ氏よりも年上です。
当時の日本では、そんな若者を(現地人での)最高責任者に据える
なんてことはオーナー一族以外考えられません。
親会社の思い切った決断のおかげだと感謝しております。
 
 この続きは次号で。
 質問やご意見をお待ちしております。

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