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上海レポート7月号(中国の労働組合)

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┃◆┃(公社)いわき産学官ネットワーク協会News  2016.07.31       
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┃  「中国への企業進出セミナー」でお馴染みの
┃  佐藤忠幸氏から『上海レポート』が届きましたのでお知らせいたします。

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 現在、中国は上海に事務所を構え、
中国での会社設立・販路拡大等を支援している、
(公社)いわき産学官ネットワーク協会アドバイザーの佐藤忠幸氏から
「上海レポート」7月号をお届けいたします。

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◇上海レポート7月号(中国の労働組合)◇

暑中お見舞い申し上げます。
久しぶりに日本で夏を過ごしています。
とは言っても、横浜は梅雨がやっと明けたばかり、昨年よりも18日も
遅い梅雨明けだそうです。
日本の夏は、猛烈に暑かったり、涼しかったりと体調を維持するのに大
変ですね。
上海も暑かったですがこれほどには感じませんでしたし、変化がそれほ
どでも無かったような気がします。
中国では38℃を超すと屋外作業や冷房のない作業は原則禁止となりま
す。したがって、そうならない様に道路工事などの屋外工事は、緊急時
以外には夏は行いません。
しかし、さすがに中国。気象局からの気温発表はいつも38℃以下です。
民間の温度計では40℃以上であってもね。うまい仕組みですよ。

つい先日、むかし働いていた会社の労働組合役員仲間との交流機会があ
り、労組役員の現役時代を思い出しました。
同時に中国の労働組合あるいは労使関係について、日系企業があまりに
も無関心なことを思い出しましたので、今月はそれについて報告します。

【中国には労働組合の代わりに「工会」という組織がある】
多くの参考書では「工会=労働組合」と紹介されているが、それは間違
い。あくまでも、工会は労働組合に代わる組織というだけである。
理由は後で記すが日本などの先進国では労働組合とは認められない性格
を持っているからである。

中国(中華人民共和国)はもともと国名のとおり労農国家であり、労働
者と農民が主役の国であるが、市場経済という名の資本主義が進み過ぎ
「労働者は資本家に弱い者だ、保護しなければならない者だ」
という存在となったのが今世紀。
労働者と労働団体を保護するための法律が後記の「労働契約法」。
本来の社会主義国家であればあり得ない資本主義的な法律である。

では何故企業に工会があるのか?
それは法律で設立を義務付けられているためである。
元々「労働法」で工会の設立は義務付けられていたが曖昧であり役割も
不明確であったため、何処も無視していた。もちろん大半の日系企業も
無視してきた。
2008年1月施行の「労働契約法」で工会の位置づけが高まり各種の協議
が義務付けられ、慌てて会社主導で設立したのが現状である。
「工会=労働組合」は間違いと前に書いたが下記のごとく工会に主体性
と自治権がないからである。

企業および工会に対して、法律で義務付けられていること。
①工会費用として総労務費(賃金ではない)の2%を企業が拠出する
 こと。・・・それ以上の費用が必要なら工会員から徴収する。
②工会専従役員の給料は企業が負担すること。
③工会役員の配転・解雇は原則禁止。
④企業は、工会活動のための場所と時間に特別な配慮をすること。
⑤労働者の全てが工会員となる。
⑥労働者とは、出資者以外の全て(雇われ社長や経営者・管理者も含
む)である。ただし工会委員長になるには若干の制約がある。
⑦一企業に一組織。すなわち第2工会は作れない。
⑧工会を作れば必ず地域上部団体(地方工会)に加盟させられ上納金
を取られる。上納金は、工会費用(総労務費の2%)の40%すなわち
総労務費の0.8%と決められている。
⑨工会の活動範囲は文化・生活・経済に関わることのみとし企業の発
展に協力することが義務付けられている。もちろん政治活動は禁止。
⑩工会にはスト権は無く、むしろ争議を抑制する義務を負っている。
⑪役員選出方法その他基本的規約に関わることも法律で詳細に決まっ
ている。

すなわち工会には、労働組合の三要素(結社の自由.団結の自由.独立の
自由)の全てが無く自治権も無いことから先進国では労働組合とは認め
られない。

だから、日本の御用組合よりも御しやすいだろうと、タカをくくってい
る経営者が多いがそれは危険。
2008年の労働契約法施行前は、工会を毛嫌いし作らせなかった企業が多
かったが、労働契約法でうるさく言われてからあわてて形だけの工会を
作った。
当時の工会責任者は、ひどい会社だと副社長や工場長・総務部長などを
指名させていた。それではあんまりだと最近改選して他の部課長にして
はいるが管理職であることに変わりはない。

そういう企業の日本人社長や中国人総務部長に次の問いをしても返事は
無い(できない?)。
「労使関係を如何にして向上させるか?」
「労使協議や労使交渉の時、誰がどちら(労働者側か会社側か)の席に
つくか?」
時々、中国人総務部長から「わが社は極めてよい労使関係ですので協議
とか交渉の必要性はありません」とのピンボケのお答えがあるが、それ
に対しても日本人社長からは意見がない。
労使間の協議無くして労使関係を向上させ保つことは不可能。また労働
者に重大な影響がある事項(賃上げや就業規則改定等)は労使協議(合
意が条件ではないが誠意をもって説明し納得させる必要がある)が法律
で義務付けられているがどうするのだろうか?

形だけの労働団体ほど危険なモノはない。
工会は作ったから終わりではない。
それを育てて活用するのも経営者の仕事であることを分かっていない。
自分で育てられなければ外部機関に依頼すべき。
しかし労使関係という概念のない中国には教えられる外部機関は無い。
上部団体である地方総工会も(自分の出世のために)工会を作ることに
は熱心だが育てることは知らない。労使関係という概念も持ってない。
だから、健全な労使関係を築いてきた日本人が教えるしか術がないのだ
が・・・・。

昨年から今年にけけて顧問をしていた中国の会社の事例です。
年功序列型賃金制度を能力主義型に変えて欲しい、とのご依頼で早速
訪問しお話を伺いました。
創業して10数年経った結果ものすごい高給取りばかりの会社です。
それでいて優秀な新人を採用したくても、新人だから先輩よりも安くな
ければならず、採用困難な状態が続いているのを直してほしいという訳
です。
作業としては、制度改定作業と並行して幹部社員の意識改革のための研
修をしました。理由は、幹部社員の大半が年功序列型賃金制度の恩恵を
受けている、すなわち既得権のかたまりです。
もちろん工会主席(委員長)の○○部長はその最たる者です。
彼らが、賃金制度改定の必要性を理解しなければ制度改定は不可能です。
そこで、研修会を8回もやり、いよいよ来週から制度改定の説明開始と
いう段階になって突然、山猫スト(組織だってない突然発生するストラ
イキのこと)が起きてしまいました。

配送トラックの運転手の一部5人が歩合給が不公平だという理由で、ス
トライキに入り門前でシュプレヒコールを上げ始めたのです。
改定作業中の賃金制度とは全く無関係な騒動です。
工会主席に聞いたら「我々は無関係だよ」と全く無視していました。
おかげで4月から改定実施の予定が無期延期となってしまいました。

山猫ストをした5人は、就業規則から見ると懲戒解雇対象者です。
無断職務放棄と社外への悪宣伝行為ですから絶対です。
しかし、弁護士と地方政府役人に相談したら
「この会社の就業規則は、社員に説明した理解させたという証拠がない
ので有効ではない。したがって解雇できない」
と言われたそうです。
(私なら強引に解雇して見せしめにするがなー)
この会社はどうなるのでしょうか?

工会という労働者団体が機能していないとこうなるのだという典型例の
ご紹介でした。

私はいくつかの会社で、工会づくりのお手伝いと工会役員教育も(社長
から依頼され)請け負いましたが、全ての会社で「初めての教育内容だ」
と喜ばれたものです。これもむかし労組役員を経験させてもらったおかげ
と感謝しております。
しかし、工会教育の必要性を理解し外部へ依頼する経営者は、残念ながら
稀です。

日系企業には、山猫ストが多発しています。
これを「中国の労働者は程度が低いなー」とお嘆きの方もいるようです
が、労働者よりも「労使関係」軽視・無関心の、経営者の姿勢を嘆くべ
きだろうと思うが如何ですか?

暑い中、ガチガチ固い報告で申し訳ありません。
これから猛暑となるようです御身大切にお過ごしください。

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佐藤忠幸/Sato Tadayuki 
  電話:045-771-1745  
 E-Mail: tada-sato@mvb.biglobe.ne.jp
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